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というわけで
私は先週とある休日 福岡地方裁判所へと向かっていた
あの事件の判決を傍聴するためである
事件名「保護責任者遺棄致死 詐欺 窃盗」
おどろおどろしいこの事件は そう・・・
福岡で起こったいわゆるママ友による5歳児餓死事件である
私はこの事件を知った時 ものすごい衝撃を受けたものだ
この令和の時代に小さな子供が餓死するとは・・・
そして餓死事件により被害者の母親とそのママ友が逮捕され 二度びっくりであった
私はどうしても解せない・許せないという気持ちが心にずっと渦巻いており
この事件の最終結論を法廷で傍聴しなければならないと思ってきた
そしてその機会は間もなくやってきた
これは私が体験した令和4年9月21日の「5歳児餓死事件・判決傍聴記」である
この判決を傍聴するためには「傍聴券」が必要になる
当日午後1時30分から午後2時までに集合場所に来た人を対象に
傍聴抽選権を配布するとの事
抽選は2時からだ
1時過ぎに私が裁判所へ到着した時はマスコミ・記者もまばら
傍聴抽選権を求める人も見当たらない
時間もあることだし まずは裁判所内を見学するかと入口で手荷物検査を受ける
もちろんスッとパスし中へと進む
コンビニへ行ったり食堂喫茶なども見て歩き お手洗いも済ます
しかし裁判所内をウロウロしていたらふと心配になり
集合場所の南側ロータリーを確認していなかったことに気付く
やはり肝心な時に大事なことを確認せず出遅れてしまった私
南側ロータリーがどこにあるかを人に聞いて駆け付けた時には
既に50メートルほどの列ができていた
(まあ早いもん勝ちじゃないしどっちみち抽選ですから)と平静を装い並ぶ
抽選券はピンクの派手なリストバンドである(紙製)
リストバンドを外したりすると当たっても無効になりますとの事
「敷地内ではスマホ撮影はしないでください!」と何度もアナウンスが飛ぶ
私の番号は「0503」だ
この数字を見た時(今日の傍聴券は私がもらった)と思った
この数字を足すと「8」だからだ
日頃あまり気にも留めないけども 今日だけは特別だ
この「8」という数字は私にとってラッキーナンバーである(と思うようにしている)
長い長い列が途絶えることなくでき マスコミ・老若男女がぞくぞく集まりだしていた
2時になりいよいよ抽選だ
私はこの時点でずっと立ちっぱなしだったため かなり疲れており
(早めに番号呼んでほしい・・呼ばれたらソッコー休憩しにカフェに行こう)
と考えていた
私の希望通り割と早い3番目に「503番」と呼ばれた
この日傍聴した報道ステーションの井澤アナウンサーによると
「今日は判決の傍聴券を求めて400~500人が列を作りました
この中には記者だけではなく被告の母親と同年代の女性の姿も多くありました」
68席の傍聴席をめぐる戦いをクリアした私は再び気を引き締めた
午後3時前
本日2回目の手荷物検査を受け
(この人さっきも来たよね?)的な検査官の視線をものともせず
101号法廷室へ入る
既に何人か座っているが 室内は水を打ったようにしんとしている
徐々に裁判官らが 大きな資料を抱えて着席していく
私は被告人の表情を観察したかったので記者席の後ろ
前から2列目に(いい席が空いてるやん)と思いつつ着席する
「スマホを触らないでください」というアナウンスの中
じーっと席に着席している時間があった
(何してるんやろ?)と思っていたがそれが
ニュースに出るこのシーンであった
被告人が入廷する前にカメラが後ろから撮影していたのですね
撮影が終わると「ほーーっ・・・」という空気が一瞬流れるが 間もなく
「開廷します」の声で我々は一同例をし あの被告人が警察官2名に挟まれ入廷してきた
赤堀被告は腰縄を装着され ヒモで繋がれたまま被告人席へたどり着く
カチャカチャと不気味な音を響かせながら腰縄をほどく婦人警官の
ピシッとした後ろ姿が印象的だ
被告人は49歳だそうだが その姿はもはや高齢者であった
バサバサに伸びた髪の毛は白髪になっており 相変らずデブだった
裁判長の「はいこんにちは」という柔らかい声が響く
被告は「こんにちは」と若い声で挨拶を返す
私は(「こんにちは」とか軽く挨拶するんだ・・・)とびっくりして
イスからズリ落ちそうになった
裁判長が「あなたのお名前は赤堀恵美子さんですか?」と聞くと
「はい」と答える被告
「今日は保護責任者遺棄致死 詐欺 窃盗事件の判決の日です
判決から言いますね 分かりましたか?」と裁判長が口火を切ると
「はい」と一言だけ答える赤堀被告
「主文 被告人を懲役15年に処する」
裁判長が告げると 何人かの傍聴席の記者らしき人がダーっと法廷室から出て行った
速報を伝えるためかもしれないが ものすごーくせわしかった
(傍聴中でもあんなふうに出入りしていいんだ)と驚いた私
裁判長が続ける
「なぜこのような判決になったかを今から話しますね
30分くらいかかりますけどよく聴いてくださいね 分かりましたか?」
「はい」と淡々と答える赤堀被告
記者席の人たちは 裁判長が話している間 ずーっとノートに何かを書き留め
または画用紙に「法廷スケッチ」なるものも描いていた↓ ↓
私の斜め前に座っている記者席の人のスケッチブック
カリカリカリカリ鉛筆を動かしているのがものすごく気になり
首を伸ばしてのぞき見しようとしていたら その人は突然スケッチブックを持って立上り
法廷室を足早に出て行った
小脇に抱えていたイラストをちらっと見たら
色付けする前の被告がものすごーく上手に描けていて
思わず「おおっ!すごいっ!!」と言いそうになってしまったほど
裁判長が この事件を時系列にし説明していく
「被告は碇に対し『悪口を言っている人がいる』など
ありもしないことを事実であるかのように吹き込み碇を周囲から孤立させ・・・」
「碇の夫の浮気調査をボスがしていてその調査費用として金を請求し
欺く行為を繰り返した・・・」
「そのボスは幼稚園の母親の中におり暴力団関係者であると碇を欺き・・・」など
その内容を聴いているとちゃんちゃら可笑しくて笑いそうになる
私なら「あなたの悪口を言っている人がいる」と教えてくれる人がいたら
(・・・この人も一緒に私のワルグチを言ってるんだろうな・・・
ワルグチ言われてるよと言われたこちら側の表情を見ようとするのはヤーな感じ)
と思うし
(神聖なる幼稚園に暴力団関係者がいるのってヤバくね?)とおののき
園長先生に「頼んでもいない浮気調査をする変な人が園にいるんですか?
しかもそのお母さんは反社関係者だと聞きましたよ!これは大問題ですよっ!
でもそんなインチキ話をしている保護者がいるのはもっと大問題ですよ!!
一刻も早くやめさせんかい」
と大まじめに相談しに行くに違いない
しかしこんな茶番劇でも
ここはマインドコントロールという脳のメカニズムが働いているのである
脳科学者の中野信子さんならどう解説してくれるのだろう 是非聞いてみたい
・・・とまあこの被告の悪事を裁判長の口から聴いていると
その内容が酷くて悪意に満ちていて吐きそうになった
この事件は「赤堀被告の支配があったのか」というのが最大の争点であったが
「赤堀被告が碇被告の生活を実質的に支配していた」と裁判所は認定した
「確かに被告人は保護責任者ではなく
その生存に必要な保護をすることは保護責任者である碇が
絶対的に果たさなければならなかった責任であったが
巧妙かつ悪質性の高い手口で被害者の不保護を主導したのは
ほかならぬ被告人である」
「被告人が本件犯行を否認しているため
動機は必ずしも判然としないが 少なくとも強い金銭欲があったのは明らかである」
怒りで震えながら真剣に判決内容を聴いていると 背後から声を掛ける人が
「・・・すいません 裁判所の方ですか?」
一体なんでしょうかという感じで「いいえ」と私
「すいませんココ裁判所関係者の席なんで・・・すいません」
「あ!すんませんすんません」と平謝りしながら後ろの席へチェンジする私
赤っ恥を掻く前の私の後ろ頭が ニューズゼロにしっかりと映っていた
話は逸れたが
裁判長は柔らかい口調だがきっぱりと言った
「酌量の余地は全くない」と
「被告人の刑事責任は懲役15年を下回るものではない」と
私などシロートもしくは母目線で言わせてもらうと
これだけのことをしておいて懲役15年って軽くないだろうか?
もっともっと重くしても良いと思うし何ならば被告がこの子供にしたように
留置場の食事を抜いてほしいと思うくらい
「スッキリ!」に解説で出演した菊地弁護士によると
「この判決は検察の100%勝利と言って良い 裁判所は検察が求刑した15年よりも
もっと重いかもしれないくらいの口っぷりで判決を書いていたのが特徴的だった」
傍聴終盤
私はひもじい思いで苦しみ抜き
たった5年という短い人生を閉じなければならなかった小さな子供を想い
祈りを捧げる
「被害者は本来であれば家族や祖父母に囲まれながら幸せな生活を送り
様々な経験をする未来があった
そのかけがえのない命や未来が奪われたという結果は
痛ましくも取り返しのつかない重大なものである」
「被害者の体にはこの飽食の時代にほとんど脂肪が残っておらず
内臓も大きく委縮するなどしており
その肉体的苦痛は想像を絶するものがある」
「被害者の辛く悲しい気持ちは計り知れない」
今でも裁判長の話を思い出すだけで涙が出る
「この判決に不服がある場合は控訴ができます
14日以内に手続きを・・・分りましたか?」と裁判長
赤堀被告が「はい」と淡々と返事をすると
閉廷した
赤堀被告は元通り腰縄を付けられ警察官に挟まれ
大きな体を揺らしながら退廷していった
判決が始まる直前 法廷内右端に大きな衝立が置かれた
(姿を見せたくない誰かがそこで傍聴するんだろう)
被害者の母親かなとちらっと思ったけれどそれは報道されなかったので
今ではもう分からない
盲目のピアニスト 辻井伸行氏はかつて
「僕は目が見えなくていいんだけど
もし1日だけ目が見えるなら・・・
お母さんの顔が見たい」と言った
この尊い言葉が赤堀被告の心を打つことは
絶対にない
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